まだね、時々ね、不安になるんですよね。


 いつも柔らかく笑顔をたたえている彼が、不意に真顔で、そう呟くことがあった。





 「どうして?」

てっきり幸せいっぱいだろうとばかり思っていたから、驚いて訊くと、彼はまたぽつりと呟いた。




 「…まだ……はっきり言葉で言ってもらったことが、ないから」





















             
      『A Love Song.』






















 「立派なお屋敷ですなあ」
「はあ、元々は何処ぞの殿さまが万一の時の為に造った隠れ処だったそうで…結局血筋も途絶えてしまったそうですよ。朽ちそうだったのを、私どもが買い取ったのです」
「ほー…隠れ処、のわりには広いですね。ま、流石に造りは質素ですけど」
「よほど大きなお家だったんじゃないですか?古い話ですから、あまり知らないのです」
「なるほど。…すみません、不躾でしたか?」
「いいえ、とんでもない。怪しい雲を祓ってくださった法師殿ですから、気になることはなんでもおっしゃって下さい」
「……あはは」
乾いた笑いを漏らす。後ろで、連れの人々が同じように乾いた視線を送っていた。
























 「毎度毎度、ちょーっとだけ申し訳なくなるわよねぇ」
「でもたまには柔らかい布団で寝たいしのう」
「もう良いじゃねぇか、今更だろ?今更。」
「しょうがない、かぁ。そうね、しょうがないわね」
「…何ぶつぶつ言ってんですか、皆して」
じろ、と睨んで、それからはぁとため息。でも誰もが、素知らぬ顔でそれぞれのことをやっている。
 隣の少女は、冷静な手つきで自分の武器を磨いていた。







 「法師殿」
部屋の外からの声。はい、と答えると、すうっと障子が開く。
「今宵はお礼に宴を、と思いまして」
「そんな、大したことはしていませんよ」
「いや私の気が済みませんので。幸いのことこの村はわりに良く収穫出来ていますから、食べ物も酒も…そうだ、娘も可愛い子が何人かいますよ」
その瞬間、一行の何人かがびしりと固まったことには名主は気付かなかった。楽しそうに宴についての話を続ける。
 当の弥勒さえも若干冷や汗をこめかみに浮かべて隣を横目で見ていた。犬夜叉、かごめ、七宝ももちろんのこと、心配そうに見ている。
 やっとほんの数日前に少しは落着したと思ってたのに。せっかく静まってたとこへ一石投じるんじゃないよ名主さん。
 皆、そんなようなことを思っているようである。
 しかし珊瑚はふいと顔を上げると、むしろ穏やかな笑顔で、
「…良いですね。とても楽しそうです」
さらりと言った。みんながぎょっとして珊瑚を見る。
「おお、退治屋殿もそう思われますか!」
「はい。…でも、私たちだけが良い思いをするのは少し気が引けます」
「そんな、貴方がたの気にすることでは…」
「だから村の人たちも自由に参加できるようにしましょう。米も、彼らが一生懸命育てた物でしょうから、みんなで一緒に食べるのが一番です」
 少し考え、そして名主は頷いた。
「…そう、そうですね。それは良い考えだ。……退治屋殿はお優しいな」
「そんなことはありませんよ。…あ、娘さんたちのことですけど」
緩みかけていた空気がまた冷える。けれど珊瑚は相変わらず穏やかに、
「無理矢理に連れてくるのだけはやめて下さいね。出来れば、来た人みんなが満足して帰れるように」
言った。名主は上機嫌で答える。
「心得ました。では、さっそく手配を……あ、法師殿。宜しいですよね?お仲間もこう言っておられることだし」
「……はい」

 返事をした弥勒は、どうにもしっくりこない顔で隣の珊瑚を少し見た。










 「…なんかヘンじゃない?珊瑚ちゃん」
「…ヘンだけど、どうとも言えない。」
「右に同じじゃ」


 三人が、ひそひそと言っていた。静かな部屋に一すじ風が入る。

 秋晴れの空は、青かった。
































 「ねー珊瑚」
「何?」
「…なんか……」
「何ってば」
「……恐い。」
「はぁ?」
 退治用の薬草を採りに行くと告げると自分も行くと言い出して、そして来たと思えばひたすら黙って後ろをてくてく付いてきて、やっと口を開いたと思えばまた訳が分からない。
 思わず、視線と語調が尖る。
「…何言ってんの?」
「だって恐いんですもん…」
「恐いって、何が!」
「……前なら、ぎっと睨んで黙りこくったりしたのに…」
「……?」
「笑ってるなんて、恐かったです」
「…なんで笑ってるのに恐いのよ」
「だって恐いんですもん」
「二回目」
「だってそうとしか言えないんですもん」
「……ていうか、何。なんの話?」
少し伺うように珊瑚を見て、
「…さっき。」
ぽつりと言った。しばし逡巡し、ああ、と呟く。
「……別に、笑ってたって良いじゃないか」
「だから、それが恐いの。」
「じゃあ黙ってたほうが良かった?」
「…それも嫌です」
「どっちだよ!」
苛立って声をあげると、弥勒は一瞬目を丸くしてそれから肩を落とした。ため息をついて、それからちろりとまた珊瑚を見る。
「……、ねー珊瑚」
「何さ……っわ!」
背に腕を回されて、叫んだ時にはぎゅうと抱き締められていた。草を入れた小篭が落ちる。少し窒息しかけて、顔を上向けてやっとぶは・と息を吐く。
「…、何すっ…ちょ、放してよ!」
「……一回だけ」
「一回?」
「一回だけ――…」
耳元に唇を近づけ、そっと囁いた。





「…好きだ、って、言って下さい。」






 きょとんと目を丸くして、少し離した弥勒の顔を仰ぎ見る。その表情が存外切なそうで、一瞬言葉に詰まる。
 けれど少しして、頬を赤く染めて「……やだよ」と呟いた。弥勒はぱちぱち瞬きをする。
「どうしてですか?」
「どうして、って、……何さ改まって」
困ったように眉根に皺を寄せ、両手で弥勒の身体を押し返す。もう力は緩んでいたから、簡単に離れた。小篭を拾い、駆け出す。
 「…ほら、置いてくよ!法師さま!」
まだ頬に赤みの残る顔がそう言い捨て、早足で山道を下っていく。


 少し寂しそうにその背中をしばし見つめ、それから弥勒も歩き出した。































 「さあさ、法師殿も飲んでくださいませ!」
「はあ…ありがとうございます」
どこか上の空のような弥勒の様子にやはり名主は気付かず、ハイテンションのまま自分も相当飲んでいるようだった。かごめも苦笑しつつ、楽しそうに箸を運ぶ。
 「子供が多いんですねー、名主さん」
「あ、はい。近くの寺の住職に宴のことを話したら、引き取っている子供たちだけでも楽しませてやってくれと言われまして…みんな、戦やら何やらで親の居ない子ばかりです」
「……そうなんだ…」
楽しそうにはしゃぐ子供たちを、少し切なそうに見つめた。
 そんなかごめを、隣の弥勒が少し横目で見る。ちなみに犬夜叉はかごめの逆隣で七宝とともに料理を馬鹿食いしている。珊瑚は、弥勒の隣で黙々と箸を運んでいる。今度はその珊瑚を横目で見て、
「……珊瑚」
「何?」
「楽しいですか?」
少し間が空く。きょとんとした表情。
「…楽しいよ。なんで?」
「……なら、良いんですけど」
小さく息をついて、弥勒は杯を仰いだ。



























 「な、名主さまっ!」
 男が一人駆け込んできたのは、もう宴が始まってだいぶたった頃だった。外は真っ暗、月が細く輝いている。
「どうした、騒々しい…お客様が、」
「大変なんだ!…西の森から、なんか知らねぇけどどっかの兵が攻めてきた!!」
「…なんだって?」
耳を疑った様子で、名主が立ち上がる。宴の席が少し静かになった。良く分かっていない子供たちだけがはしゃぎ続けている。
 「どういうことだ?こんな小さな村を攻めたって…」
「米目当て、じゃないですかね」
こともなげに弥勒が言い、村人と名主とがばっとそちらを見る。
「どういうこと、ですか?」
「道中、どこぞへ攻め入るつもりなのか、武装している侍たちの行列を見ました」
膝では、はしゃぎ疲れたのか寝入ってしまった小さな子が寝息を立てている。その背を柔らかく撫でながら、続ける。
「戦をするには兵糧が必要です。……この村を無理矢理にでも統治すれば、それが一気に、大量に手に入る」
ここはとても恵まれているようですから・と付け加えた後で、
「攻めてきた、という表現は過剰ですね?」
「え…」
駆け込んできた村人が目を見張る。その目をじっと真っ直ぐ見つめる。
「大方、大量のかがり火でも、森の中に見たんじゃないですか。」
「……はい。」
「なんで分かんだよ、弥勒」
「なんの騒音もしないからだ。それにお前だって血の匂いだ煙の匂いだと騒いでない」
「……まーな」
「だったら、今行けば間に合うでしょう」
「何?なんかするの、弥勒さま」
「ほんの少しばかり痛い目合わせれば、お帰り願えるんじゃないですかねぇ」
にやっと笑った。どうせ本来の目的地じゃないんですから・と付け加える。犬夜叉もそうだなと同調し、立ち上がった。かごめと珊瑚が一瞬きょとんとし、それからようやく合点のいった様子で立ち上がる。弥勒は、立ち上がらなかった。
 「どうした?弥勒」
「…立てそうにありません、すみませんが。」
「何?」
言われ、改めて弥勒を見る。そしてその膝上の子供の寝顔を見て、けっと吐き捨てた。
「馬っ鹿でー。下ろしゃ良いだろ、下ろしゃ」
「起きちゃいますよ」
言って、少し頬を突付く。まだ3,4歳の子供だ。紅色の頬は不思議なくらいにふくよか。

子供を見下ろす弥勒の目は酷く優しい。

 「…いいよ、法師さま。法師さまは留守番」
少し笑みを零して珊瑚が言った。もう手には飛来骨を持っている。
「珊瑚?」
「どうせただの人間相手だし…殺しちゃいけないのはきついけど、」
 ここで村人の何人かが目を丸くしたが珊瑚は気付かない。
「でも、大丈夫だろ。行ってくるよ」
「そぉねえ。あたしの矢も光るから、威しくらいにはなるかな」
「風の傷で地面割れば落ちるんじゃねぇか?」
「それじゃ死んでしまうじゃろが。村と山の境を裂くぐらいにしとけ、犬夜叉」
 よどみなく、当たり前のようになされる会話に、ますます名主達は首を傾げた。おずおずと訊ねる。
「あの……法師殿、お仲間がた、……なんの話を?」
 すると当たり前のように弥勒が微笑む。
「宴のお礼ですよ、名主様。」






 少しして、弥勒を除く一行は名主と村人の先導により西の森へと消えた。

 名主の家では、何人かの給仕の女とはしゃぐ子供たちと、微笑って見守る弥勒だけが居る。































 しばらく経った頃。
弥勒は、
「…案外、遅いですねぇ。そんなに手こずることかな」
ぼやいていた。すると子供たちは耳ざとくそれを聞きつけて、寄ってくる。
「ほうしさま、何言ってるのー?」
「あそぼー!」
「ははは…すまないな、今この子が寝てるから。」
「えー、つまんないー!」
「あー、あたし、お歌知ってるよ!教えたげる!!」
「本当か?」
「うん!あのねー…」
 活き活きと話しかけてくる子供たちに応じながら、一瞬だけ苦笑い。
 なんだか懐かれてしまったな。そう小さく呟いて、でもすぐににっこり笑った。差し伸べられる小さな手を握り、教えられる可愛らしいわらべ歌を一緒に歌う。
「懐かれてしまいましたねえ」
空になった皿を片付けながら、給仕をしていたおばさんがにこにことそう言った。ほんとですねえと呟くように返す。
「なんだかねぇ、少し意外ですわ」
「え?」
「法師殿は、お酒も良く召し上がるようだし」
片付けの手をふと止めて、相変わらず柔和な笑みを浮かべながら、
「ずいぶん、辛い旅をしているようだし。…こんな小さな子供たちの相手なんて、お嫌いかと」
 ごめんなさいねと言われ、気にしませんよと軽く言った。
「子供は可愛いですからね。相手をするのは、わりと好きですよ。それに…」
後ろからぴょんと飛び掛ってきた男の子を腹から抱え上げ、少し揺らしてからゆっくり下ろす。きゃっきゃっと軽やかな笑い声が上がる。
 笑ってその背中をぽんと押し出した後に、

「それに、此処がこの世だと良く分かって、ほっとする」

ほんの少し虚ろな瞳になってぽつりと呟いたその言葉に、おばさんは訝しげに小首を傾げ、それから片づけを再開した。





 名主の家の中は、酷く穏やかである。
































 「もうこんな馬鹿なことは、やめる?」
「ははははいぃっ!」
珊瑚に胸倉を掴まれ、引きつった笑顔で返事をしているのは、軍勢の統率者らしき男である。
 「なーんか、案外あっけなかったねー…」
「この森までの道のりの方が、よっぽど長かったのう」
「なんで村の端から端までがこんな遠いんだ…」
「そうそう、名主さんの家がちょうど東の端っこで、西の森と対極にあるなんて驚いたわよねー」
 のんびりとした会話。傍では名主と村人も地面に座っており、なんとも複雑な表情で犬夜叉たちを見ていた。
 そばの地面はひび割れ、森の木々の一部は綺麗になぎ倒されたり消滅したりしている。

 「…じゃ、もう許してあげようか」
たっぷり何分もお説教をかました後でふと珊瑚が言った。ほんとですか・と言わんばかりに男の顔が輝く。
 「うん、じゃあ……あ。ほかに仲間、居たりしないだろうね?」
それはふと思い浮かんだことだった。本当に何気ないことで、まさか本当にそんなことがあるわけはないだろうしこのまま穏やかにことは済んで自分たちも名主の家に戻れるとばかり思っていた。
 けれど、男ははっとした様子で口と目をぎりぎりまで、開いて、それから青ざめた唇で、
「……居ます…」
弱々しく答えた。


 その場の人々が固まる。





























 「…ねぇ、法師さまー」
少し思い悩んだ様子で、5,6歳くらいの女の子がおずおずと袖を引いた。きょとんとして、なんですかと問う。
「なんだか焦げ臭いよぉ」
「え?」
言われて、はっとして辺りを見回すようにきょろきょろと頭を振る。酒でどうやら少し鈍っていたらしい鼻が、それでもなんとかその臭いを今更嗅ぎ取った――…確かに、何かが焦げ、くすぶっている。
 「……なんだ…?」
眉をひそめ、とりあえず傍にあった錫杖を握った。不意に漂い始めた緊張感に、子供たちがきょとんと目を見張る。そして僅かな異変に気付き始めた。
「どうしたの?」
「あれ、なんだか焦げくさくない?」
「ほんとだ、けむいー!」
「けむいよけむいよ」
「ほうしさま、これなぁにー?」
騒ぎ始めた子供たちへ、落ち着きなさいと静かに告げる。確かな情報の無い今、あまり混乱させては後々まずいかもしれない。そんな気がした。
 膝の子を起こすのは可哀そうだが、一旦立って様子を見に行こう。そう思って弥勒が子供の肩を叩くべく腕を動かしかけた時、ぱん、と障子が勢い良く開かれた。

「ほ、法師殿!みんなもっ…火事!火事です!!」



 あの給仕のおばさんだった。




























 「火!?火ぃつけるって言った、今!?」
「いややややややめっ……!」
「さ、珊瑚ちゃん揺らしすぎ!!…どういうこと、それ!?」
がくがくがくと胸ぐら引っ掴んだまま男を揺らす珊瑚をなんとか制止し、かごめが問い詰める。汗をだらだら流しながら、息も絶え絶えに男はなんとかしゃべり始めた。
 「…も、元々……作戦で、…大勢で火を持ってこちらへ来れば……男手はこちらへ来るだろうし、その間に村の反対側から火を放って……混乱に乗じて、米を…」
「…っ、最ッ低!!」
 かごめが怒鳴り、ぺちんとその頬を両側から挟むようにしてはたく。男はもちろん誰もが一瞬その気迫に圧されたが、犬夜叉がはっと目を丸くした。
「…おい。村の反対側…って、」
ひゅっと珊瑚が鋭く息を吸う音。そして震える声で、


「……名主さまの…家だ……」

呟いた。






























 「早く出て!…一番近い出口はどこですか!?」
「こ、この廊下を真っ直ぐ行って…名主さまの寝室を抜けて、左に行けば、庭伝いに門へ!」
「すみませんが先導を!」
「は、はいっ!」

残っていたのは何人かの女とたくさんの子供たちばかり。せめて雲母くらいは残していってもらうべきだった・と舌打ちする。家が木材ばかりで出来ている上、ここ数日晴れ続いたおかげで乾燥した空気の中では火はあっという間に広がっていた。真っ黒い煙が瞬く間に充満し始める。
 きゃあきゃあと悲鳴を上げる子供たちの背中を押し、小さな子は抱え、なんとか煙の中をかいくぐって弥勒たちはやっとのこと外へ出た。
 「!」
「おっ、人が出たぜ。」
 門を出てみると、数人の男たちがきょとんとしてこちらを見た。鎧。刀。手には、松明。
 子供や女達を庇うように一歩前へ進み、睨むように相手を見る。
「…貴様らが…火を放ったのか?」
「なんだ坊さん。文句あんのかい?」
せせら笑い、そして、まあいい・米倉に案内しろやと乱暴に言い捨てた。女達はひっと身をすくませたが、弥勒の眉間の皺はぐっと深くなる。
「……ああ。文句はあるな」
「はぁ?……なんだって?」
怪訝そうに男がそう呟いた瞬間、風が、啼いた。
「……!?なっ…」
誰もが吃驚したようにそれを見つめる。響く轟音。木の裂ける音。
 ジャッ・と鋭い音が一つして、そしてそれはやんだ。
「消えたいか?」
一言、言う。
 男達は消滅した森の一部とまっさらになった地面をしばらくぽかんと見つめた後、「すみません許して下さい」と早口に次げて両手を地についた。



 「あ、ありがとうございます法師殿…!」
最初は恐々といった様子で近づいてきた女達も、顔を綻ばせ両手をすり合わせて礼を言う。大したことじゃないですよ・と乾いた声で言った後、それより誰か怪我人は?と問うた。みんなが、他の人はどうかときょろきょろ辺りを見回す。
 と、子供の一人が声をあげた。
「ほうしさまー。へーすけが居ないよ」
「…え?」
 弥勒の表情が、凍りついた。
「…へーすけ?……仲間か!?」
「うん。ほら、ほうしさまに後ろからとびかかったりしてたじゃない」
浮かぶ笑顔が一つ。そういえば、どこにも居ない。
 「…畜生っ!!」
一言叫ぶと、駆け出した。給仕のおばさんの止める声が聞こえたが、無視して駆けて行く。



 もうすっかり火の広がった、家の中へ。




















                                    ------→To the latter part.